2010年09月07日

崇福寺と興福寺  2010年長崎旅行(27)

崇福寺と興福寺  2010年長崎旅行(27)

崇福寺は凝縮した美がある
興福寺は開放的な伸びやかさがある

崇福寺は一見して中国的だ
見ただけで強烈な印象を目に植え付ける
興福寺は一見日本の寺院と余り変わり無い様に思うが
すぐに違いに気付き始める

崇福寺の境内は狭い
その中に朱塗りの堂宇がひしめく

最初の三門で、大方は驚く
全体の朱塗り、組物・梁などの彩色の模様など
一見日本の寺院には無い物を見るのだが
古代日本の寺院は同じように朱塗りの建物の要所要所に彩色の模様が施されていたはずだ
(むしろ神社に朱塗りと彩色模様をよく見ることがある)
いつ頃から文化の枝分かれをしたのだろうか
興福寺ほどではないが、屋根の反りが大きい






第一峰門は他のどこにも無い工芸品
細い肘木と枡斗による幾何学模様の一つひとつに彩色模様が描かれる




背後に控えている世界に対して入口の開き方が狭いように思える





(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)



門の内側も、どこまでも朱塗りの世界
朱の色が保たれているのは、常に定期的な手入れがされている証拠
建物に経年の古さを感じさせないのだが
大雄宝殿は400年近くたっている国宝建築

私は中国の寺院建築を直に見たことは無いので、これらの建築を中国的といってよいのか分からない
和様建築の寺社に比べて雰囲気が違うというだけで中国的だといってよいのか判断できない
第一峰門より内側の伽藍の屋根は反り方が極端でなく、この辺は日本の寺社建築の面影がある
おそらくはより中国風に寄り添った和漢折衷の建築物なのだろう





(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

いずれにしても、ここは「何風」というよりは「崇福寺風」といってよいような一つの世界を造っている
その世界には隙が無いように思える
その隙の無さはどの辺の印象から来るのか、その場ではよく分からなかったのだが
今思い浮かべてみると、第一峰門を入って大雄宝殿の前から姐馬堂の前まで
一面に敷石が敷き詰められていた事から来る印象なのではないかと思う
狭く、密集した空間だから出来た事なのかもしれないが
境内という一つの空間の足元に至るまで完璧にデザインした事が
その隙の無いという印象を造り上げたように思う





興福寺の山門を見たとき、一見純粋な和様建築のように見える
山門は禅様か、禅様と和様の折衷と思う
ここまでなら割とどこでも見かける造りなのだが
その山門が赤く塗られているのが、門の内側を暗示しているのかもしれない



(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

崇福寺に比べ、境内は開放的で、空間に余裕がある
崇福寺は寛げる場所ではなかったが
興福寺では、境内の各所にベンチがあったり、大雄宝殿と庫裏との間にも休める空間が確保されている
これはただそのような空間があるというだけでなく
境内の持つ雰囲気のように思う



大雄宝殿は一見素木造りのように見え、和風建築と間違えそうだが
すぐにその異質の姿が目に付くようになる
素木造りに見えた全体も、よく見れば上層部は赤く塗られている


崇福寺と興福寺  2010年長崎旅行(27)

屋根の四隅に見る極端な反りは日本建築の範疇ではない

大雄宝殿は建材一式を中国より持ち込んで建てられたという
(建物一式が輸入品ということになる)








屋根の軒下、梁の表面などに細かい彫刻が施されている
和様の建築でも木鼻や虹梁に彫刻を施したものをよく見かけるが
梁に工芸品のような浮き彫りを施したものは見かけないように思う

窓の組子による装飾も面白い

また、黄檗天井は聖福寺・崇福寺の「への字」型のものではなく
きれいな半円形になっている






(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)



境内にはこのほかにも「媽祖堂」「三江会所門」などの、中国を思わせるものが多い

ただ興福寺でも、あるいは崇福寺でも
これらの雰囲気が「異国情緒」を感じさせるよりは
「長崎」という一つの大きな文化の枠に、その構成要件の一つとして溶け込んでいるように思える
それ故に、「唐寺」という一つの強烈な個性があるにもかかわらず
その存在に違和感を感じない

長崎という街の雰囲気の特異性なのだろう


長崎の過去の旅行記事はこちらを御覧ください(「長崎」タグに移行)




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Posted by 旅人 at 00:01│Comments(0)長崎県
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