2008年12月30日

ベートーヴェン 第九

ベートーヴェン 第九年末恒例の第九
あまりにも当たり前の理由で
ベートーヴェンの第九のことを書き始めたわけですが
なにかの機会に書いてみたい曲だとは思いました

「歓喜の歌」があまりに有名なため
ポピュラー名曲としてクラシックの入門曲みたいな扱いを受けるようです
実際私が生でオーケストラを聴いた初めてのコンサートも第九でした

しかしこの曲、そんなに聴きやすい曲でしょうか


正直言って、初心のころは合唱が出てくるまでは
つまらない曲だと思いました
必ず途中で眠りました

高校生のころ
先生のうちの幾人かは市民合唱団で第九を歌っていました
つまりその先生からチケットを買わされるわけですが
歌っている本人自ら言うんですね
「いいか、合唱が始まるまでは眠っていてもいいぞ」

第九は有名な曲だけど
いい曲だな、と思うまでには何年もかかりました

第一楽章と第二楽章
この二つの楽章の主旋律を歌ってください
といったら、歌える人はどの位いるのでしょうか

綺麗な旋律など
この二つの楽章には無いんです
旋律と呼ぶにはあまりに短い旋律(動機)を
伸ばしたり縮めたり
音やリズムを変えたり楽器を重ねたり
それでも足りなければ
別の動機をさらに重ねて、という具合に
縦に音を積み重ねて作り上げてしまった曲なんです

甘い旋律など無いのですこし聴きにくい曲だと思うのです

でも、この音の積み重ねのマジックに嵌まってしまうと
途端にこの曲が「すごい曲だ」と思うようになってしまい
もう病み付きになります

第三楽章も仕掛けは同じなのですが
曲がゆっくりなので旋律のように聴こえてしまうのです
そして、なんと美しい曲なんだろう、と思ってしまいます

第九という曲、一度耳になじんでしまうと
もう疑いも無く(そして言うまでも無く)
ベートーヴェンの交響曲の
最高傑作だと思ってしまうのです
第三楽章までは・・・・・

私にとって、第三楽章までの造りに慣れてしまうと
第四楽章が何か異質なもののように思えてしまうのです
第四楽章がわるいというわけではありません
ただ、突然語り口が変わってしまうのです

もともと第九という曲
別々に計画されていた二つの曲を一つにまとめてしまった
「ニコイチ」の曲なんだそうです
だから語り口が変わったとしても別に不思議は無いのです

しかし、歴史に禁物の「もし」が許されるのなら
合唱でない第四楽章を持つ「第九」を聴いてみたいのです

弦楽四重奏曲第十五番の最終楽章に用いられている主題が
もともと「第九」第四楽章のために用意されていたものだ、といわれています
時々、この主題を思い出しながら
合唱でない第九の終楽章を想像してみます
でも、実際に存在する「合唱の第四楽章」によって
この試みはいつも立ち消えになります
(もともと素人が空想するのが無理なのですが)

やはり第九は合唱で終わらなければならないようです



さて、私の好みの演奏は という話になると
その選択はあまりに当たり前すぎてしまうのですが
フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管
となります
緊張感のある第一・第二楽章も大変すばらしいのですが
私は第三楽章に惹かれます
仮に「よい音楽は」という定義をするとしたら
(もちろんいろいろな定義が出てくると思います)
その定義の中に「美しい音楽」と「(聴く人を)思索させる音楽」
という考え方が出てくるのではないかと思うのですが
フルトヴェングラーの第三楽章は
この二つのことを感じさせてくれる演奏だと思います
そして、第四楽章
よく話題として取り上げられる
コーダ(終結部)のものすごい加速、スピード
注意したいのは、このいかにも素人っぽい効果の上げ方
この表現を
第三楽章で見せた最高の芸力を持った指揮者が
その芸力を持ってこの表現をして見せたという点
だから凄みがあるのです


もうひとつ録音を挙げるとしたら
小川典子(ピアノ)
バッハ・コレギウム・ジャパン(鈴木雅明 指揮)による
ワーグナーのピアノ編曲版でしょうか

もっとも、この演奏の最初の三つの楽章は
あまり興味がわかないのです
しかし聴き物は第四楽章
わずか24人による合唱は
「第九は大合唱」という固定概念を完全に払拭し
透明感あふれる室内合唱(?)に作り変えています
小規模合唱のためか表現に小回りが利き
音楽は常に飛び跳ねるように生き生きとしています
第九の第四楽章に別の面から光を当てたような
目からうろこが落ちるような演奏です 


タグ :音楽



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Posted by 旅人 at 01:38│Comments(0)音楽
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