2012年06月29日

ベルワルド 交響曲第三番「サンギュリエール」

「面白いけれど、つかみどころのない曲」なのか 
「つかみどころのないけれど、面白い曲」なのか 

しかし、第一楽章最初の音が出た瞬間から引き寄せられる 
「めっぽう面白い曲」なことは確か 

曲の始まりは一小節ごとに「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」と言った具合に 
オクターブ以上を上昇していく 
その一音ごとに、その音の周りを簡素に装飾していくだけ 

「”ドレミファソラシド”の上昇音階に装飾をつけて、短い曲を作りなさい」と言った練習課題のようにさえ聴こえる 
まことにつまらない曲の始まりの筈なのに 
その単純な上昇音階を包み込む「周りの音」が簡素ながらも魅力的に聴こえる 
そして、その「周りの音」はふくよかに膨らんでいく 
それは「穏やかな日の出」 
その日の出は、夏のギラギラした太陽でもなく 
冬の寒さに凍える中に見るものでもなく 
「春の穏やかさ」をもっている 

そんな雰囲気に誘われて、ついつい30分足らずの全曲を聴き通してしまう
でも、第一楽章を聴き終えたとき 
「メロディーは何処にあったんだろう?」と考え込んでしまう 
動機(短い旋律)を積み重ねたパズルのような曲のよう 
形が捉えにくいから「つかみどころがない」 
けれど「面白い曲」、聴いていてワクワクする 

第二楽章は「ドラ焼き」
二枚の皮(ゆっくりとした音楽)の間に餡子(スケルツォのような軽快な音楽)がはさまれている 
「コロンブスの卵」的なアイディアの音楽 

第三楽章は、今までの明るさ、穏やかさとバランスをとるかのように 
少し暗さを帯びた、速い音楽 
しかし最後では明るいファンファーレで終わる 

聴き終わってみると、第一楽章の印象が際立っているように思う 
ベルワルドというあまり知られていないスウェーデンの作曲家 
音楽界の中心から離れていたからだろうか 
自分の好きなように音楽を組み立てることが出来たのだろうか 
実験精神旺盛なのだが 
それを越えて第一楽章は魅力に満ち溢れる 

目の届かないところに、魅力的な音楽はまだ多く隠されているようだ  
タグ :音楽


Posted by 旅人 at 00:58Comments(0)音楽