備忘録に代えて

昔から、母の実家へと行く際には南幹線を通っていた
その際、清水の市街地に差し掛かったころに
キリスト教の教会が立派な威容示しているのを見かけた
だから、この教会堂の名前を知らなくとも
よく見かける馴染みの風景として記憶していた　



カトリック清水教会 360度パノラマ写真(1) posted by (C)備忘録　旅人


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この教会堂を取り壊して新築するか　
それとも保存修理して使い続けるか、という問題があることを
ずいぶんと前に報道で知ったのだが
つい先日になって、
この教会堂が12月の初旬から取り壊しとなることを知る　
構造材などの建築資材は保存され　
将来土地と資金の都合がついたら
それらの資材を使って再建される予定だという
しかし、教会堂としては既に使われておらず　
教会堂としての使命はすでに終了している　
これは仮に移築できたとしても同じだ　

カトリック清水教会 360度パノラマ写真(2) posted by (C)備忘録　旅人


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教会堂の取り壊しについては｢取り壊し在りき｣の
この地区の司教区からの上意下達だったという　
地震による倒壊の危険性が高い、との理由だそうだが　
地元の建築士の見立てでは　
｢良質の建材と堅牢な造り｣
｢外観も内部も景観を全く変えなくても、修理、耐震出来る｣
との見解だったという　
この教会堂の存続は十分に可能だったようだが　
｢この教会堂を残したい｣という信徒たちの願いは届かなかった　



カトリック清水教会 360度パノラマ写真(3) posted by (C)備忘録　旅人


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いま、土曜日に教会堂の内部が公開されている
( 10/28,11/4,11,18,25 12/2　9:00～15:00 )　
通りすがりに外から眺めた教会堂は立派に見えたが　
改めて近くで見ると意外と小さいように思えた　
中に入ると、前後の奥行きがそれほどでないことが
小さく見えたことの理由だとわかる　

木造の骨格に外装は人工石とモルタル、内装は木軸を漆喰で塗り固めている
天井はリブ・ヴォールト(コウモリ天井)
静岡でリブ・ヴォールト天井の建物はどれほどあるのだろうか　
白を基調とした室内は明るい印象　
色付きのガラス窓から差し込む光が
室内にほのかな色どりを添える　

此処もまた、落ち着いた、心休まる場所なのだろう　
この場所で、多くの人々が
喜びと希望に満ちた時を過ごしたに違いない　
そして、同じぐらい多くの人々が　
悲しみと苦しみに耐えかねて泣きながらこの教会堂を訪れ　
ここで慰められ、癒しを受け、明日への希望を得たのだろう　




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この教会堂は88年の間此処に立っていたから貴重だ、と言う訳ではない　
88年の間、多くの喜びと悲しみを見守り　
その人々のあまりに多くの息遣いが教会堂の中に染み込んでいるからこそ　
貴重なのであり、この教会堂の持つ深みなのであり　
何物にも代えがたい存在なのだと思う
この教会堂は｢教会堂｣として、この場所に居続けなければならなかった筈だ
その事が判っていたならば、簡単に｢取り壊す｣などという事は言えない　
｢弱きものの声に耳を傾ける｣という
もっとも基本的、根本的なことが出来ていれば　
この様な結果にはならなかっただろう




カトリック清水教会 360度パノラマ写真(4) posted by (C)備忘録　旅人


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このような事を考えていた時　
ふと　次のような詩があったことを思い出した

｢天主堂の死｣　パチェコ・ディエゴ(結城 了悟)

私は天主堂がなくなるのを見た。
一番古い天主堂のひとつであった。
年の重さの下にだんだん弱くなっていた上に
人間の理解が足らなかったのでその姿は消えた。
伊王島の大名寺の天主堂は
秘密教会と塔やステンドグラスがある天主堂の間の興味深い建築であった。
この建築の宝を保存する方法がないだろうかと私は考えた。
この天主堂は立ち去った時代の証し人であり、
将来の為教えになるものである。
大名寺の天主堂を壊すのは数日しかかからなかった。
アーチと柱、祭壇などのまだ役に立つ木は丁寧に包まれて、
島から、長崎から、遠いところに送られた
そこに、いつかもう一度建てられるそうであるが、
決して同じものではないだろうと思う。
そこには長崎の空も海もないからである。
また一つ長崎は宝ものを失なうことになった｡

(｢大いなる遺産 ながさきの教会｣http://www.tomojapan.com/nagasakinokyoukai-web/kyoukai/daimyouji.html　より引用　原本はパチェコ・ディエゴ「長崎の天主堂」西日本文化協会、1976年８月 )


人間の理解が足らなかったのでその姿は消えた
そう、｢人間の理解が足らなかった｣ばかりに
静岡の土地からも、多くの貴重なものが失われていった
そして、今、一つの教会堂が失われようとしている
たとえ、他の土地に移転、再建され
建物として生き永らえたとしても　
教会堂として、今まで通り　
多くの人々の喜びと悲しみを見守り続けることが出来ないのであれば　
それは｢教会堂｣としての｢死｣を意味するのだろう



カトリック清水教会 360度パノラマ写真(5) posted by (C)備忘録　旅人


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私自身はキリスト教徒では無い
だから、全くの傍観者として
このことを見過ごしても良かったのかもしれない
しかし、ここで書いたような事を考えながら　
また
｢か弱き多くの人々の願いが上に届かなかった｣ことを思ったとき
私は悔しさと遣り切れなさを感じざるを得なかった


カトリック清水教会聖堂を活かす会　https://www.cath-shimizu.com/

カトリック清水教会の聖堂を全ての人に、、、。 https://www.facebook.com/lucien.delahaye1884/

きれいな木造ゴチック様式の「清水カトリック教会」を保存するか、新築するか？
https://blog.goo.ne.jp/yuki9693/e/e13d24fa5c37dfa5fbc72546a6553597
(このブログではほかの記事でも今回の件に関して詳細が語られている)

カトリック清水教会に関する見解(日本建築学会東海支部)　https://www.aij.or.jp/jpn/databox/2020/201102tokai.pdf