2016年10月17日
臨済寺の古図

2016年10月15日、臨済寺の特別公開日
年二回の特別公開は静岡の風物詩のようにも思える
昨年修理を終えた大方丈の杮葺き屋根の色合いも
一年たった今は早くも落ち着いた色合いを取り戻し
周囲の緑と調和するようになってきた
いつも通りの臨済寺
10月の公開時には、大方丈に「葵の御門」の幕が張られる

今年は公開日が土曜日だったためだろうか
来場者の数は、私の記憶の中では例年のそれよりも
遙かに多い
書院では茶室へ上がるための順番を待つ来場者が部屋を埋め尽くしている
この様な光景は今までなかったように思う
臨済寺の佇まいはいつもと変わらない
大方丈の中で展示されている絵画や古文書は
多分毎回入れ替えが行われているだろうと思う
古文書については読めないからただ眺めるだけなのだが
今年はひとつ目を惹いたものがあった

臨済寺の古図
今までこの古図は展示されたことがあったのだろうか
少なくとも私の記憶にはないのだが
もしかしたら見落としていたのかもしれない
いずれにしても初めて見る古図
現在の建物の位置と照らし合わせながら見ていく
いつの時代のものかは分からない
しかし、たぶん現在の大方丈が再建された江戸時代初期以降のものなのだろう
大方丈以外の建物はのちに建て替えられたものも多いようだから
現在の建物の配置とは違っている所もあるのだが、それは当然の事だろう
しかし、この図の中で私が驚いたことが二つあった
それは今までの私の中にあった「臨済寺の佇まい」についての先入観を
大きく揺るがすものだった

鬼階段が無い
臨済寺の山門をくぐると目の前に現れる鬼階段
訪れたものに尋常ならざる印象を与える力強い光景は
臨済寺の最も優れた景観の一つだと思う
しかし、古図でこの部分を観察すると
鬼階段は中間で途切れる
その先は石垣で遮られ、参道は石垣の手前を左右に曲り
その両端から昇る階段で大方丈のある平面に到達する
大方丈の正面に直接登ることを避けた動線となっている

大方丈前の敷地が塀で囲まれている
大方丈の縁側に出て外を眺めると
静岡市街地のビル群が見える
例えば京都の禅寺では、大方丈の前は「石庭」となっていることが多いから
石庭が無く、正面の平地が広場のように存在し
静岡市街地が直接「借景」となっている光景は
多分創建当時の風景は「ビル」等の夾雑物はないから
石庭等を設けなくとも景観が成り立つ、というふうに
臨済寺特有の景観として理解していた

だが、古図では
この大方丈前の敷地のうちのかなりの部分が塀で囲まれ
塀の中央には「御成門」なる門が設置されている
多分塀の内側には石庭が造成されていたと思われる
つまり、当初の臨済寺は大方丈の前に「石庭」
そして背後には池泉回遊庭園という
禅寺としてはきわめて「標準的」かつ「常識的」な庭園の配置となっていたことがうかがわれる
前面に広がる塀と門は、おそらくは駿府の街並みの景観を遮ったであろう
禅寺としては「必需品」であった「石庭」が臨済寺にも存在した可能性については
驚きも大きいのだが、ある意味では当然でもある
その石庭を取り払ってまでして現在の寺院空間を作り上げた理由はどのようなものだったのか
それは想像するよりほかはない
もしかしたら塀や門の維持に困難が生じたからかもしれない
塀に取り囲まれた石庭の存在する空間よりも
現行の光景の方が優れている、と感じてこの様な空間を設計したとは思えない
何かしらの「妥協の産物」だったのだろう
「失われた」石庭の景観に未練がないわけではない
「臨済寺の石庭」がどのようなものだったのかは、それはそれで興味深いものだ
しかし「鬼階段」の景観とセットになった現在の大方丈前の空間は
「常識的」な禅寺の景観と比べてものびやかで力強いものを感じさせる
他にみつけることのできないような優れた景観のように思えるのだ
ただ、創建時から不変のものだったという先入観で理解していた現在の光景が
実際には時とともに変化し、再創造された結果の空間であったという事に
幾らかの「心地よさ」を伴うショックを与えられたような気がする
それは一種の「感動」かもしれない
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https://www.360cities.net/search/@tags-rinzai-ji-temple
長尾川河畔の桜は見ごろになった
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Posted by 旅人 at 01:45│Comments(0)
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