備忘録に代えて

岡部宿の「大旅籠柏屋」では
シーズンになると例年等身大の雛人形が展示されている　
私も二年前にその人形を見て　
その存在感と表情の豊かさが印象に残った　

しかし、人形そのものはそれなりの大きさがあるから　
柏屋の一階座敷に板の間も使った形で　
各部屋・板の間に人形を点在させる形での展示になっていた　
もしこの人形が普通の雛飾りのような「段飾り」で展示されたとしたら　
また一味違った「壮観」な眺めになったかもしれない　
内心ではそのような感想を持ちながらも　
大きさが大きさだけに　
それは無理な相談であろうと思いながら　
そのような姿を空想していた　

藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(2) posted by (C)備忘録　旅人

48年前にこの人形が出来上がって初めての展示の際は　
町の体育館を使って「段飾り」として展示したという話を聞いている　
制作者も同じような考えを持っていたのかもしれない　

柏屋は旅籠とは言っても部屋はごく普通の大きさだから　
高さはそれほど高くはない　
でも、工夫の仕方があったようだ　
今年の展示では昨年までのすべての人形床に置く形ではなく　
一部の人形ではあるが部分的な段飾りが実現されていた　




藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(1) posted by (C)備忘録　旅人


藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(3) posted by (C)備忘録　旅人


藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(4) posted by (C)備忘録　旅人

段飾りとは言っても段の高さ自体は僅か(30cmぐらいだろうか)だが　　
その効果は大きく　
全てではなくとも一つの塊で「雛人形」を見ることが出来るのは　
雰囲気の点からも実に素晴らしい
そして団に載らなかったほかの人形もすぐ近くに展示することができ
今まで以上に雛人形の「群像」としての一体感を感じることが出来る　




藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(8) posted by (C)備忘録　旅人


藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(9) posted by (C)備忘録　旅人


藤枝市岡部町　大旅籠柏屋　等身大ひな人形(10) posted by (C)備忘録　旅人

二年前には離れたところで展示されていた三体の｢仕丁｣も　
続き間の後方ではあるが、同じ空間に並べられた　
制作者はこの仕丁の造形、顔の表情を特に念入りに作ったという　
他の人形たちに比べてさらに踏み込んだ表現が可能だったからだろう　
雛人形という、少しすまし顔の儀式の様式の中に紛れ込んだ　
人間の「さが」を、寛いだ様子の中に閉じ込めている　

これらの人形は製作者が「私の為」に作った　
「大人の人形」なのだろう　



　　　
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等身大雛人形 大旅籠柏屋 (2015年2月16日記事、初期の展示方法)　
大旅籠柏屋の等身大雛人形(2019年3月5日記事、台所での五段飾りによる展示)