2010年07月22日

明治村で見た建築物 (2)

明治村で見た建築物 (2)

明治村の一番外れ、「5丁目」街区にある大明寺聖パウロ教会堂は小高い岡の上にある
白漆喰の映える真壁造りの建物はごく普通の日本建築だが
その内部は、外観からは想像もつかない教会堂特有の雰囲気を持っている






(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

大明寺教会堂は明治期に立てられたごく初期の教会堂形式を伝えるものとされている
外観が大きくないから内部の装飾も限界があるが
それでも小規模ながら天井は「コウモリ天井(リブヴォールト天井)」となっており
その他にもアーチを多用した装飾は教会堂としての雰囲気を高めている

キリスト教の禁教が解けた後の、ごく初期の教会堂は民家のような外観のものが多かったようだ
禁教が解けた後も続いていた周囲の厳しい目を避けるかのように、目立たないようにしていたらしい




話は前後するが、「3丁目」街区から「5丁目」街区へ行くのに
「4丁目」までは旧京都市電(動態保存)に乗っていくことが出来る




架線から、天井から伸びる長いポールを使って集電するのだが
両端の停留所ではそのポールの向きを手作業で変える場面を見ることが出来る








昔の電車だから、内装は木がふんだんに使われた温かみのあるもの
運転台(実に簡素な運転台!!)は二本のレバーのみがあり、その二本のレバーを運転士が巧みに操作している



(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

「4丁目」街区の停留所(「市電名古屋駅」)で市電を降り、「5丁目」街区へ足を向ける
宇治山田郵便局舎の特徴有る建物を過ぎると、前方に大きな教会堂が見える




聖ザビエル天主堂は、もともと京都の河原町三条にあったという
白い教会堂は周囲の緑と青空に映える

しかし、この建物の原初の形はレンガ積みだったらしい
明治村移築の際にコンクリートの外観に変更されたらしい
当初は壁や窓のモールディング等はゴシック様式の異形レンガの積み込みにより作られていたが、移築に際し、建物強化のために躯体を鉄筋コンクリートに変更するのに合わせて、モールディングの部分もプレキャストコンクリートに変更するのに合わせて、モールディングの部分もプレキャストコンクリートに置き換えている。(明治村ホームページの解説より引用)

この教会堂の当初の姿はどのようなものだったのだろうか
レンガ積みだったとしたら赤茶けたレンガの外装だったのか
それともレンガの上に漆喰を塗っていたとしたら
現在と同様に白亜の教会堂だったのか




この教会堂は周囲の景観とマッチしている
しかし、落ち着いて考えてみると、この景観はこの教会堂本来のものではない
ビルとビルとの間に挟まれた中に、窮屈そうに建っていたはずだ(隣は確かロイヤルホテルだったはず)
それではこの教会堂が建った当初は、と考えると
背の低い町家に囲まれた中、その威容を表していたのかも知れない

あまりに周囲にマッチしているため、この教会堂を見たときについロマンティックな感傷に浸ってしまうが
実際には街の中に有った、街の中で生きていた建物だった

それは先の大明寺教会堂も同じだ
伊王島は行った事が無いが、おそらく周囲を民家に囲まれ
その土地の少し高い所に、民家の影の中から垣間見るような場所にあったのではないのだろうか
前の記事で紹介した「そこには長崎の空も海もない」という言葉の中に
これらの教会堂を、博物館的な見学だけではなく
その教会堂がもともとどのような土地にあったのか
どのような人々の「心」によって支えられていたのか
どのように人々の「心」の支えになっていたのか、について
思いをはせてほしいという願いを感じ取れるように思う



(HDR加工による画像).......



(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

教会堂の内部は「荘厳」、三廊式の広い空間
明治23年(1890年)という年代の中ではこれほど立派な教会建築は少なかったのではないだろうか
(他の大都市にも当然あっただろうが、火災・戦災等で残らなかったのだろう)
その意味で、京都という「大都市」に建てられた、力の入った建築物だったのだろう



(HDR加工による画像).......


下から第一アーチ(「アーケード」)、小アーチによる装飾帯(「トリフォリウム」)
クリアストーリ(天窓)の有る第二アーチというふうに
三層からなる典型的なゴシック様式の景観は
真横から見ると美しい幾何学模様のようになっている

「ステンドグラス」は、ガラス板に絵の具で着色し、更に透明なガラスを重ねて保護しているそうだ

コウモリ天井(リブヴォールト天井)の背の高い空間は、少しの音でもこだまさせる響きを持ち
この場所が「非日常」の特殊な空間であろう事を想像させる




明治村を2時間半で見て歩こうとするのは無謀な事だ
一つ一つの建物を丁重に見て歩いたら、このぐらいの時間はすぐに過ぎてしまう
この日はかなり駆け足で見てまわったのだが、最後の「帝国ホテル」にたどり着いたときには既に閉館時間だった

此処に移築されたのは中央玄関のみ
写真で見る昔の帝国ホテル全体像は横に広がった空間のようだから
現在の姿は「翼をもがれた鳥」のようなのかもしれない

東京の一等地を、背の低い大きな広がりを持つ建築物が占めるのが「非効率的」な事だったのは間違いない



(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)



(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)







もしこの建物がホテルとして機能していたとしたら、おそらく私には縁の無い場所となっていただろう
それ故、この様な展示施設となったことで初めて「近づく事が出来る」のは少し皮肉な感も有る

既に閉館時間だったので、駆け足で10分足らず見たに過ぎない

玄関ホールに入った第一印象は「意外に狭い」
特に入口付近は天井が低く、押さえつけられたような印象がある
入口を進みホールに入ると吹き抜けの空間となり、その窮屈さは緩和されるが
ホール自体の床面積に広さを感じない

天井の低さは、現在喫茶室として使われている二階の部分でも感じる

もちろんこの建物は「全体の一部」だからこの玄関だけで全てを判断は出来ない

照明も暗く、そのため全体的に明るさが無いように思うが、これも当初のものだったのだろうか

外装も内装も、表面はデコボコしている

柱に取り込まれた「照明」は灯篭のような趣があるが
和風というよりはアジアの何処かの石造り寺院のような趣が有るように思う

何かの様式に基づいたのではなく、建築家の自己主張の強さが現れたもののように思う

「名建築」の誉れ高い旧帝国ホテルを10分足らずで見るのは無理が有る
もしゆっくり見ることが出来たならもっと違った感想があったかもしれない

その点も含めて、次回明治村に行く時は最低一日を掛けるつもりで行かなければならない、と思う







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Posted by 旅人 at 20:00│Comments(4)愛知県
この記事へのコメント
旅人さま、こんばんは。
短時間では回りきれないほどの見ごたえですね。
外見からは教会だとは決して思えないのに入ってみると教会。
意外なところがまた面白いですね。
ステンドグラスの美しさも際立っていますね。
よくステンドグラスが物語のように作られているところが
ありますが・・・
昔、読み書きが出来なかった人たちのために物語風に作られたと
いいますね。
どんな宗教でも信じる人たちのためにいろいろなものは考えて
作られているんだなあと感じます。
Posted by じゃすみんじゃすみん at 2010年07月22日 22:46
じゃすみんさん、こんばんわ。
外見は民家のような教会、この様な教会堂は長崎の特に離島には幾つもあったようです。外見は民家のように質素でも、内部はその大きさからは想像もつかないような豊かな空間があったといわれています。
また、絵のようなステンドグラス、私も見たことが有りますが、物語が「光り輝く美しさ」の中で語られるさまは、信じるものにとっては特別な思いを持つのかもしれません。
余談ですが、以前五島の教会に有るルルド(聖なる泉とでも言えばよいでしょうか)の解説板は、次のような言葉で締めくくられていました。
「信じるものに説明は無用、信じないものに説明は無駄である」
どうも宗教とは、最終的には理屈抜きに「信じるか信じないか」ということになりそうです。
Posted by 旅人旅人 at 2010年07月22日 23:19
こんにちは。

久しぶりにおじゃまします。
明治村には、10年以上前に行きましたがこんなに沢山見るところが
有ったんですね・・・
それに、ハイダイナミックレンジ加工にはビックリです。
写真にはこんな技術が有ったなんて興味深いですね。
また違った表情が絵とも写真ともいえない感じで浮かび上がってくる。。。
これからも楽しみにしてますね。
どんな表情が現われるのか楽しみです。
Posted by TakaTaka at 2010年07月23日 17:12
Takaさん、こんにちわ。

HDRは実に色々な表情を見せてくれます。
特に教会のステンドグラスのような、周りとの光の強弱に大きな差の有る被写体の場合、大きな効果があるようです。
まだ手探りの技法ですが、逆光や明暗の差の多い被写体を主に取り組んで見たいと思っています。

明治村の奥深さは尋常ではありません。時間をもっと余裕を持ってまた訪ねて見たい場所です。
Posted by 旅人旅人 at 2010年07月23日 19:05
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