2010年09月19日

平城宮 大極殿

平城宮 大極殿
(HDR加工による画像).......

大極殿のある平城宮跡へは、JR奈良駅西口から無料のシャトルバスが出ている
シャトルバスは朱雀門横に広がる臨時バスターミナルに着く
ここには案内所、土産物店、食事処などがある
また、遣唐使船などを展示したパビリオンのあるようだが
このときは入場までにかなりの時間を待たなければならなかったので割愛
朱雀門より平城宮跡に入る

平城宮 大極殿

朱雀門が出来てからもうだいぶ経つ
そろそろ朱の色も落ち着いてきた筈なのだが
実際には今でも「新築」の門のように新しい
やはり100年単位で見ないと「枯れない」ように思う

門の中からは、はるか向こうに大極殿が見える

平城宮跡は草の生えた広い平地の所々に礎石や基壇の跡が点在している
それ以外は何も無い、という姿を見慣れていたから
大極殿がその景観の中に加わった事に少々の違和感を感じている









ともかく、真新しい大極殿に向かう
新調された鴟尾や風鐸が黄金色に輝く
大棟中央部に光る飾りは宝珠と言うのだろうか
また、欄干部にも宝珠状の装飾が並べられている



(写真をクリックしてください 拡大します)






(パノラマ写真 写真をクリックしてください 拡大します)

大極殿の中はかなり広い
柱が整然と並び立ち、組み手と共に寺院建築と同じ構造
しかし、寺院とは明らかに違う雰囲気
寺院ならば中央に須弥壇があって仏像が鎮座しておられる
宗教的には合理的な空間配分であって、無駄なスペースは無い
しかし、大極殿の中は「ただ広い」だけのように思える
中央には高御座が一つ有るだけで、基本的にはそれ以外のものは無い
(もちろん、展示スペースとして使われているから実際には幾つかの展示物がある)

この大極殿も、また大極殿前の広場も
儀式など人で埋め尽くされた時に初めてその場所が生き生きと躍動するのかもしれない
ここは、寺院のもっているある種の静謐さとはまったく縁の無い場所なのだ
大極殿の規模の大きさや、その前の広場の広さは
感動ではなく威圧感をもって迫ってくるように思う

大きな木造建築としては、東大寺の大仏殿をよく拝観するし
古い木造建築なら法隆寺や唐招待寺といった寺院を見ることが出来る
再建された堂宇なら薬師寺の金堂が立派だ
それらの堂宇に対して、その価値や個人的な好みなどの違いがあったとしても
私はこれらの堂宇に対してある種の感動(おそらくは背後にある宗教的な熱意)を感じる

では、大極殿では何を感じたら良いのだろうか
大極殿を造る時に払われた意匠等に対する配慮には学術的な良心が満ちていただろう
文献等の資料に乏しくとも、復元作業は誠実に行われたと思う
また、この建築物を造るに当たって、多くの古建築の技術的な事が伝承されたと思う
その事に対し十分に敬意を持ちたいと思うし
もし大極殿の再建に何らかの意義を考えるとしたら上記の点が思い当たるように思う

しかし、私にとって大極殿再建の大義名分がいまひとつピンと来ないのも事実なのだ
薬師寺の諸堂宇や、ようやく始まった興福寺中金堂の再建は
その地で歴史を連綿と受け継いできた人たちによる再建であるということから
その意義を納得することは出来る
だが1000年以上地上から姿を消していた上に、史料・資料の殆ど無い大極殿再建の積極的な理由を
私は見つけることが出来ないでいる

このことはあくまでも私個人の感想であり
他の意見や感想を妨げるものではない
しかし、この大極殿という建物に対して私の心がときめかなかったことを正直に書いてみた
朱雀門も、大極殿もまだ朱の色が鮮やかだ
これらの建物が草地の中にポツンと建っている事を、私は相応しい景観であるとは思わない
しかし、このことは時が解決するのかもしれない


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Posted by 旅人 at 00:25│Comments(2)奈良県
この記事へのコメント
今年NHKの朝番組で平城京跡が連続放送されましたが巨大な大極殿を見て伝統に生きてる日本建築と比べてとてつもない違和感を覚えました。旅人さんのご意見に全く同感です。当初これは鉄筋コンクリート造だと思ってましたが
ヒノキ材の集成の丸柱の木造建築と識り、その労力を
思うと本当に考えさせられてしまいます。資料のない歴史建築を再現する方法として、伊勢神宮や法隆寺のようにその修復による再建のいかに大事な事かを再認識いたしました。
Posted by 山田勝己 at 2010年09月20日 07:43
山田勝己様、おはようございます。

柱が集成材であるとのこと、初めて知りました。
国内での巨木の調達が不可能である点は、既に江戸時代から始まっており、そのため大仏殿の柱も集成材で出来ている事は比較的よく知られていると思います。
現在では、やはり集成材を使うか海外から調達するかのどちらかしか方法が無いのでしょう。

薬師寺や興福寺が、その堂宇の再建のために資金集め、木材の調達等も含めてはるかに長い年月と地道な努力によってようやくその再建にこぎつけたということを考えていくと、大極殿の建設はあたかも「鶴の一声」のように出来上がってしまったような印象を持ちます。
もちろん実際には記事にもふれたような様々な努力や誠意があったと思いますが、割り切れないものも感じています。その思いが、実際の大極殿の姿に重なってしまったようです。
Posted by 旅人旅人 at 2010年09月20日 10:23
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