2014年03月15日

寝台特急「あけぼの」

寝台特急「あけぼの」


夜のニュースを見ていたら 
寝台特急「あけぼの」が本日の便で定期運行を終えると言っていた 
実際には臨時列車として存続するようなので 
完全になくなってしまう訳ではないのだろうが 
「北斗星」「カシオペア」「トワイライト・エクスプレス」といった 
「特別」な寝台特急を除いた
普通の寝台特急(客車)が無くなっていく事実に寂しさを感じる 
そして「特別な」3つの寝台特急もいずれ廃止されるという 
そうなると残るのは「サンライズ瀬戸・出雲」(寝台電車)だけだろうか 
しかし「サンライズ瀬戸・出雲」はスマートすぎる 
更に乗り心地も含めて、私には相性が悪い 
いつも岡山の手前辺りで「酔い」を感じる 
大概 岡山で降りてしまうため「最悪の悲劇」には至らないのだが..... 

寝台特急は「客車」に限る 
乗り心地に余裕があるように思える 
少なくとも「電車」の「サンライズ瀬戸・出雲」に感じる「酔い」を覚えたことはない 
また、寝台特急には終着まで乗っていたことが多かった 
「始発から終着まで」ということも多い 
それは「旅先までの距離」を体感するのにも良い 
朝起きた時、そこは私の生活とはかけ離れた「場所」なのだ 

「旅の始まりに感じる《自由》」を最も鮮明に感じる時でもある 


「あけぼの」廃止のニュースに接した時 
以前一度だけ「あけぼの」に乗ったことがあることを思い出した 
手元に保存していた「特急券・B寝台券」を探し出すと 
日付は”13.―2.15”つまり平成13年(2001年)2月15日 
この時の旅行はよく覚えている 
憧れに近いものを感じていた横手の「かまくら」を初めて見に行ったのだ 

前の日(2月14日)の深夜、「ムーンライトながら」で東京まで行く 
東京駅で始発の秋田新幹線に乗り大曲まで 
大曲から奥羽本線で南下、横手まで行き、横手で一泊 
翌日は横手から角館まで行き角館を観光 
秋田新幹線で秋田駅まで行く 
そして秋田駅から「あけぼの」に乗って上野へ 
そして静岡へ帰るという旅程 
今から13年前の話、ずいぶん無理な行程だったのだが 
まだ若さがあったころだからこなすことが出来た 

この時は行先の横手に宿の当てがなく 
現地で宿泊先を探すという無謀な事もした 
もっとも依頼した観光案内所の係員は 
「どうせキャンセルが出ますよ」とのんきな事を言っていたのだが 
昼頃になって現実にキャンセルが出て宿が確保できたのには驚いた 
いまとなっては良き思い出だ 
この時の旅行は当然一編の記事になるものなのだが、もう昔のこと 
それに横手の「かまくら」はのちに再訪しており 
その時のことを既に記事にしている 
「あけぼの」の話に先を進める 

前述の通り、秋田から「あけぼの」に乗ったのだが 
乗る前に手違いがあることに気が付いた 
秋田からの乗車なのだが、特急券は青森からの乗車(と金額)になっている 
秋田駅で訂正を求めたのだが 
「一旦払い戻したのちの再発行となるのだが
 すでに寝台は満席だから、作業の途中で払い戻した寝台券が売れてしまう可能性がある」
と言われる 
差額は僅かだったので、仕方なくそのままの乗車券で「あけぼの」に乗る 
だから、券は青森からの発行となっているが 
改札印は秋田駅になっている 

この時「あけぼの」の写真を撮っていないかと思い 
当時のフィルムを当たってみたのだが 
残念なことに写真は撮っていなかった 
悔やまれることではあるが、記憶まで消えてしまう訳ではない 
だが、そうは言っても記憶にはあやふやな事もある 
この時は「B寝台個室」だった 
記憶では上段の部屋で、線路に対して横になったタイプ 
部屋の天井がかまぼこ型の屋根の形そのものだったと覚えていた 
しかし先ほど現在の「あけぼの」の個室の形式を調べてみたら 
寝台の方向は線路に平行のタイプだ 
そのタイプの寝台個室にも乗った記憶があるから 
「あけぼの」の個室については私の記憶違いかもしれない 

夜行列車には独特の旅情があるという 
しかし、夜行列車はその性質から 
乗ったらすぐに寝てしまい、起きたらすぐに降りるということが多いから 
独特の旅情をいつ感じるのかと、ついつい思ってしまう 
だが、私にとっては寝台車でぐっすりと眠ったという経験は少ない 
むしろいつまでも目が覚めていることの方が多かった 
低い音が一定のリズムを刻む 
それは目的に向かってひた走るものの「健気さ」のように思える
窓から漏れた街灯の光が流れていく 
時折鳴り響く、遮断機の警報音が物悲しく響く 
停車駅では明るく照らし出されるプラットホーム 
しかし人はいない、寂しさだけが感じられる 
そんな風景を時折眺めながら、ずいぶんと経ってからようやく眠りに落ちる 

「あけぼの」では個室だったからこのような記憶になる 
何度か乗ったことのある「開放型の寝台」では 
さらに「濃密な空気」があったように思う 
つまり列車の中に多くの人が乗っているにもかかわらず 
車内は静か、何か張りつめた雰囲気に支配されている 
そこには、乗っている人の数だけの「人生」が運ばれているという 
一種の「重苦しさ」を感じた 
所要で自分の寝台を離れて通路を歩く 
明りの落された車内はもちろん静かなのだが 
それでも必ず一人か二人、窓側の補助座席に腰かけて 
ぼんやりと外を眺めている人がいる..... 

これが、「夜行列車の旅情」なのかもしれない 


「あけぼの」の行程で「残念」だったのは「帰り」に使用したこと 
つまり「終着」は「解放」ではなく「現実への帰還」であった 
終着の上野は早朝だったが、都会の駅の混雑はすでに始まり 
いやでも旅の終わりを感じざるを得なかった 

しかし、「思い出」は美化されていく 
「あけぼの」に乗ったという記憶は多くの夜行列車体験の一つとして記憶されている 
個々の夜行列車の体験は、私の中で大きな一つの塊となる 
開放型の寝台にも乗った 
個室にも乗った、「ロイヤル」にも..... 
それぞれが良き思い出なのだが 
それらは「夜行列車の旅情」に統合されていく 

JRは寝台特急を段階的に廃止している 
やがて北海道行き特急も廃止になるという 
その代わり、各地で「クルーズ列車」という観光目的の列車が運行されるのだが 
おそらく「夜行列車の旅情」とは別の情感を持つものなのだろう 
この雰囲気は、辛うじて「夜行バス」に引き継がれていくかもしれない 
いずれにせよ、旅行者にとって貴重だった「夜行列車」に対して 
私は心の中で「レクイエム」を奏でることになるだろう  
今までにも、いくつかの記憶に残る「寝台特急」が廃止されていった 
そして今日「あけぼの」が去っていく 

私の記憶の中をたどりながら 
「あけぼの」に惜別の念をおぼえた 


追記 

基本的な事を忘れていた 
夜行の客車列車のことを「ブルートレイン」ということを 
まったく失念していた 
この言葉はすでに定着している 
だから「ブルートレイン」という名称も使うべきだったかもしれない 
しかし、言葉から感じるものもあるのだが 
私には「夜行列車」という言葉の方に情感を感じる 

「ブルートレイン」という名称は客車の寝台特急に限ったものではない 
昔は寝台を連結していない客車の夜行急行にも使っていたように思う 
つまり、客車の青い車体に一筋の白い線が入っていたものを 
「ブルートレイン」の名称でひとくくりにしていたように思う 
たとえば上野・青森間の急行「八甲田」などがそれで 
「八甲田」には何度か乗ったことがある 
四人掛けのボックス席でまともに寝ることのできる代物ではないのだが 
大抵の場合は空いていたので 
二人分の座席を使って横になって休んだ 
このような、多少不便な列車でも 
周遊券を使えば急行料金は払わなくてよいので重宝した 
だが、このような「少々不便な列車」から廃止されていった 

思うに、「旅情」には少々の「不便さ」がスパイスになっているような気がする 

あと、もう一つ 
「夜行列車の旅情」ということを考えるとき 
車両の中が、一つの「運命共同体」となっているような気分になることを 
個人的には付け加えておきたい 
それは開放型の寝台車などには色濃く感じ 
寝台が個室化するにしたがって希薄になっていくように思う 

 





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Posted by 旅人 at 01:08│Comments(0)
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